相談にくるお母さんは「発達障害だと思う」「自閉症の特徴がある」と事細かに当てはまる点を教えてくれます。自分で診断している勢い。そこで「発達障害」の子供について少し書きたいと思います。記事の前半は難しいので飛ばしてもらってよいです。
「発達障害」「自閉症」という診断名について
まず、最初に言いたいことは「発達障害」「自閉症」という言葉はなくなりました。数年前に世界的にカテゴリー分類が見直され、診断名も変わっています。
「自閉スペクトラム障害」となりました。
略して「ASD(Autism Spectrum Disorder)。
ということは、「自閉症らしき」ということになります。
私は現場で「ASD傾向のある子供」と表現しています。
DSM-5における自閉スペクトラム障害の診断基準
少し難しいですが、一応下記が診断基準。
以下のA、B、C、Dを満たしていること。
A:社会的コミュニケーションおよび相互関係における持続的障害(以下の3点で示される)
①社会的・情緒的な相互関係の障害。
②他者との交流に用いられる非言語的コミュニケーションの障害。
③年齢相応の対人関係性の発達や維持の障害。B:限定された反復する様式の行動、興味、活動(以下の2点以上の特徴で示される)
①常同的で反復的な運動動作や物体の使用、あるいは話し方。
②同一性へのこだわり、日常動作への融通の効かない執着、
言語・非言語上の儀式的な行動パターン。
③集中度・焦点づけが異常に強くて限定的であり、固定された興味がある。
④感覚入力に対する敏感性あるいは鈍感性、あるいは感覚に関する環境に対する普通以上の関心。C:症状は発達早期の段階で必ず出現するが、後になって明らかになるものもある。
D:症状は社会や職業その他の重要な機能に重大な障害を引き起こしている。
(参照:DSM-5 精神疾患の診断・統計マニュアル)
診断はどこにいくとつけられるの?
診断は医師しかつけられません。
私たち相談員は診断については口にできません。
今では児童精神科、発達外来のある小児科が主流でしょうか?
ただここで1つ言っておくことがあります。
行けば 診断名がつきます。
お母さんはドクターに自閉症の症状を中心にうったえるので、ドクターは診断します。また冒頭で述べたように「自閉症らしき」「自閉症の連続体」「いわゆるグレーの部分」がASDになりますので、医療機関に来て症状を聞いてしまった以上、「その子は自閉症ではありません!」とは誰にも断言できないのです。
「そうかな?」「そうかも・・・」「そうだなー」と診断します。
また医療機関は患者が来た以上診断名をつける必要があります。便宜上つけることもあります。そうなると診断名に「ASD」と書かれます。
ネットに書いてあってお母さんが気にする特徴
上記の診断基準は小難しいことが書いてありますが、結局は日常生活の子供の様子をドクターが聞いて診断する感じです。下記はお母さんたちが気にする典型的な例。
- つま先立ちで歩くんです
- 呼んでも振り向かないんです
- 児童館などに連れて行くと1つの玩具で遊べないんです
- 言葉が遅い気がするんです
- 落ち着きがなく、ずっと走っているんです
- 好きなものがあると1人で行ってしまうんです
- 手が繋げなくて危ないことが多いんです
- 他の子供(兄弟・姉妹)となんか違う気がするんです
という感じの訴えが多い印象。
これだけ「発達障害」という言葉が飛び交うネット。お母さんたちは1人で思い悩み、調べ尽くした状態で、暗い表情で相談に訪れます。
「自閉スペクトラム症」の診断をして欲しい?
診断を焦る方は非常に多いです。「先生から見て自閉症かどうかはっきり言って下さい」と言われます。口を濁す私にヤキモキしているお母さんも多いですね。ただ、他の記事でも触れていますが、「自閉スペクトラム症」の診断は子供のためになるタイミングでもらいに行くものです。
お母さんたちに聞きます。「自閉症」と言われると楽になりますか?
診断をつけてもらって楽になる場合
診断はつきますので医療機関に行くか行かないかは親御さん次第。
でもこの子が育てにくいのは障害のせいなんだと思ってホッとする方もいます。
祖父母に自分の子育てを責められなくなるので気が休まる方もいます。
診断をつけてもらった後の自分の気持ちのことを考えて下さい。
稀に1歳代でドクターのところに行くと「3歳くらいまで様子をみてからつけます」と言ってくれる方もいますが、やはり否定はしてくれませんので、モヤモヤが残ることは覚悟です。
園の先生に子供の特徴を分かって欲しい場合
園の先生がうまく子どもにかかわってくれていない場合は診断名の力が発揮できることがあります。「ASD」の特徴を持つ子供は工夫1つで集団生活を送れるようになったりするので、本人の困り感を減らすことにつながります。
最初から分かっていると手厚くしてもらえたり、気をつけてみてもらえるので子供の最初のつまずきが予防する効果が。園の先生も「あの子はどうも他の子と違って手がかかる」と言っていられない。だって分かっているんだから。(なかなか上手にサポートできる園は少ないのが現状)
親はちゃんと子供のことを分かってますアピールが必要な場合
クラスに手のかかる子供、手に負えない子供がいると「発達障害だ」と思う先生が多くなりました。毎日のことで、疲労も溜まり、イライラしがち。のんきな親御さんになんとか大変な思いをしていることを伝えたくなります。
よくあるのが、迎えに行くとその日にできなかったことばかりを話されるので「嫌な気持ちになる」「ショックを受ける」「園を辞めたくなる」という親御さんも。そんな時に診断をもらっていると「あ、親御さんも分かってみえるんだな。苦労してみえるんだな。」となり、できたことを教えてくれるような少し優しい対応になることもあったりしますね。
「自閉スペクトラム症」の特徴を見つけた人に教えたいこと
ネットで箇条書きにしてある特徴を読みながら横目で子供を観察し、落ち込む毎日。分かりますが、未就園、就学前の子供たちは多かれ少なかれ、自閉症らしき特徴を持っている子は少なくありません。それをわざわざピックアップしてしまうとドツボにハマります!
子どもの特徴を悪い方に考えないこと
つま先立ちで歩く?歩きますよ。クルクル回る?回りますよ。
身体感覚でまだ遊ぶ年頃です。歩くと視界が変わったり、クルクル回ると目が回る。
私たちだってやったことです。
つま先立ちでは「歩きにくいんだな」「グッと指に力を入れ続けると疲れるんだな」と分かるのはやってみて分かること。目が回ると大人に止められることだって嬉しいです。
やることやること、何が楽しいのかを考える視点を忘れないようにしましょう。
公の相談窓口を早めに予約をすること
1人で抱えないこと。夫や義母が分かってくれないと涙を流すお母さんは多いです。
誰かに話してホッとした、なかなか相談できる人がいなかったと言われます。
相談窓口は診断しません。「白黒はっきりつく」のを怖がる必要はありません。今何をしたらいいのか、今夜から何ができるのか、気になる特徴をどう考えたらいいのかを教えてもらいにいくところですから。
市町村によって混んでいますのですぐに電話しましょうね。
自閉症スペクトラム症を疑った時のまとめ
とにかくその特徴によってお母さんが勝手に落ち込んでいるだけだったら、疑わない!
子供は毎日毎日、見て、聞いて、触って、走って成長しています。変なこともします。
少しオーバーに言ってしまいますが、上記にリストにしたほとんどの特徴は年齢とともに消えます。たとえASDであっても消えます。
「発達障害 こども」と調べるとどんなページをみても脅しのような内容で、「早く診断を!早く療育へ!」と書いてありますが、そんなに焦らなくても良いです。たくさんの親子をみて、私個人はそういう考え方に落ち着きました。それよりも気になる特徴以外の部分をみてできることを見つけてあげて下さい。
永遠には続かない子育て。今を楽しんで!