世の中にだいぶ知られるようになった「発達障害」。大人になってから職場で適応できずに自分で気づくケースも多くなってきましたが、子供の頃も含めて、周りの人々に伝えた方がいいのかが最大の悩みです。ここではそんな悩みとどうやって向き合えばいいのかまとめています。
◉この記事を読んで欲しい人
- 子供が発達障害と診断されて周囲に伝えるのか悩んでいる家族
- 自分が発達障害だと分かって周囲に伝えるのか悩んでいる人
◉一言で答えると
A. 本人にメリットがあるかどうかに焦点をしぼって!
「発達障害」のカミングアウト
カミングアウトなんていう言葉はしっくりきませんが、目にみえない障害の場合は自ら申告することで初めて知ってもらえることになります。「発達障害」もその1つ。特に知的発達に遅れのない自閉症、アスペルガー障害やADHDなどの方々はそういったことを考えることが多いかと思います。
では、診察に至り、診断名がついたあと、その診断名を一体どうしたらいいのでしょうか?
「障害を知ってもらえる」=「状況を理解してもらえる」ではない
ここで1つ注意しなければならないのは、自分(子供)が発達障害であることを周りの人に話し、知ってもらったとしても、それは理解してもらえることとは別の問題です。特に、発達障害について何も知らない人に理解してもらおうとするのは難しいです。そのため、カミングアウトしたから安心というわけにはいきません!
発達障害の大人の場合
大人になった社会人が診断名をもらうのは、「会社でミスを連発している」「人間関係でトラブルが多い」「職場に行けなくなった」「家族から疎外感がある」など、様々なきっかけがあると思いますが、会社の人間関係で悩んで行けなくなる人が多いように思います。会社に行けないということは、自分の生活、人生に大きく影響してしまうので、早急になんとかしないといけませんよね。
ただ、この場合に診断名をもらって会社の人に伝えて、何か変わるでしょうか? 診断に合わせて、仕事の内容を変えてくれたり、上司からの指示のだし方が工夫されるような職場であれば、それはとても幸運なことです。が、残念ながら多くの職場はうまくいかないように思います。なぜなら会社は採用の時点でそのようなケアが必要な人材だとは全く予定していないから。
また、結婚後にパートナーとうまくいかない原因が発達障害であることに気づかされる人も多くいます。「部屋が常に散らかっている」「料理に時間がかかる」「コミュニケーションに食い違いが多い」「一度にたくさんの用事ができるとパニックになる」など、一緒に住んでいると「あれ?」と感じ始め、相手がネット検索し始めたり、自分で精神科について調べたりして、診断に至ります。
この場合は1つ目に書いた職場でのカミングアウトよりはメリットがあります。家族は最大の支援者になり得るからです。ただ1つ。両親、義父母、その他親戚に言うのは考えなくてはいけません。ただでさえ子供の結婚相手には厳しい目を向ける人が多い中、「障害」という二文字がどう広まってしまうのかが怖いところです。
発達障害の子供の場合
子供の場合は、幼少期であれば「他の子と比べてなかなかしゃべらない」「癇癪がひどい」「育てにくい」などの理由から母親が初診を予約することが多いです。もう少し大きくなってくると、幼稚園の先生が「みんなと同じことができない」「他の子に手を出してしまう」などの問題を親に伝えて相談に至ります。学童期になると、「ノートが取れない」「友達ができない」「勉強についていけない」「学校に行かない」という状態を通して、親が重い腰をあげて診断に行きます。
※小学校以上の場合にどうして「重い腰をあげる」ことになるかと言うと、集団行動が必要な幼稚園をなんとかクリアしてきた子供が、今更「発達障害」と言われても違和感しかないからです。また、薄々気付きながらもこのままいけるはずだと考えていた親もいるからです。
発達障害の子供たちの場合、周囲の人々に診断名を告げることによって注意すべきは、不用意なカミングアウトです。診断名がつくと、早速周囲に伝えなきゃと悩む親御さんは多いですが、本当に必要なところまでじゃないと、本当に無意味です。というより、本人も両親も兄弟も傷ついてしまうことがありますので、きちんと考えたカミングアウトが必要です。親戚、ママ友などは本当に伝える必要があるでしょうか?よく考えてみてください。
発達障害を診断されるメリットを考えるべき
通常、病気の場合の診断は治療、服薬、医療的ケアの方向性を医療スタッフ同士で一致させる上で必要です。本人、家族にも今後の治療経過の見通しをこれまでの前例に沿って大まかに伝えられるメリットもあります。
では発達障害の診断はどうでしょうか?
発達障害の診断名が自分(家族)を安心させる
妙な言い回しかもしれませんが、診断されることによって、これまでの苦労が自分の努力不足のせいではなかったことでホッとできることは1番大きなメリットです。「自分が悪い」「自分の育て方が悪い」「自分がおかしい」と悩んできた人にとって、発達障害は「先天的な脳の器質的な障害」なのですから自分ではなんともできなくて当たり前なのです。
それなのに、よく頑張ってきた・・・と自分を褒めるべきだし、ホッと一息つくべきです。
服薬によって症状が軽くなることも考えられる
医師によって診断名がつけられた場合のメリットといえば、服薬につながることですね。「ではどうしようか・・・」と専門家に考えてもらえることも少しだけ(笑)心強いです。
残念ながら、発達障害には根本治療がないので、表にでている症状に目を向けることしかできませんが、ADHDなどは子供から服用OKの薬もあるので相談できますし、発達障害によって起こしている緊張、不眠、パニックなどの二次的症状には薬の効果によってかなり楽になることがあります。
周囲からのサポートとケアが受けやすくなる
これは特に子供の場合は大きなメリットの1つです。
できないことを叱られ続けたり、障害によってできないことなのに強要されたりすることは幼少期の子供にとって自己肯定感を失ってしまうことにつながるひどい環境と言えます。ここで診断名を伝えることで先生たちが細かく配慮してくれたり、無理なことをさせるよりもできることを伸ばしていくように手助けしてもらえるのであれば、積極的に利用していきたいところです。
大人においても、発達障害の診断名を伝えることで、もしかしたら仕事内容が変わったり、無理のない部署に移動させてもらえるケースもあります。また転職の際にハローワークで相談できたり、次の仕事の内容を自分の障害特性を知った上て吟味できるのはメリットと言えると思います。
発達障害の診断名の使い方は自分(保護者)次第!
発達障害の診断名は、ずばり「利用するもの」です。
メリットにならない場所では使わなくていいのです。目に見えないし。
診断のあるなしに関わらず、実に10%ほどの人が発達障害だと言われています。
「あの人グレーだよね」という言葉が本人の知らないところで使われたりしますが、「その傾向がある」と言われている人は社会人の中にも非常に多くいます。医師にも多いですね笑
それでも人生を歩いて、自分で適応したつもりになれたらそれでいいんです。
診断名なんかやみくもに必要ありませんよ。
でも苦しかったら、悩んでいたら、どうしたらメリットとして利用できるのかに目を向けて、伝える場所、人を選択して下さい。
まとめ
下手に診断名を伝えることはデメリットの方が多くなってしまいますのでおすすめしません。
特に「ほら、私のせいではないでしょ?」とうったえたいがために、伝えまくりたくなる気持ちになった場合は、少しだけ冷静になってみましょう。
その相手は本当にあなたの力になってくれますか?