「人工透析」について社会的に問題になっています。患者さんからは透析を受けないと意思確認があったそうですが、死亡直前にその意思を撤回したとのことで死亡は過失ではないかというニュースです。透析の患者さんが増える一方でその導入のあり方が問われています。
人工透析とは
人工透析は簡単に言ってしまえば、血液を抜き取って、水分と毒素を抜いて綺麗にして、また体にもどすというもの。腎臓が機能せず、尿がでないため、機械でその役割をしないといけないのです。じわじわと普通の血流のように抜くスピードと戻すスピードを調整するため、ある程度良い数値になるのに、1回4時間程かかりますし、誰でもご飯を食べたり水分をとったりする以上、2日に1回の透析が必要です。
医療機関では週3の通院をしてもらうことが多く、4、5時間ベッドで寝ていてもらいます。(ちなみにTVモニター付き)
本当は毎日5時間くらいする方が体に優しいので、在宅で透析をする人もいますが、手間がかかり、危険もともなうのであまり広がりませんね。
人工透析の医療費は一体いくらかかるのか?
何より驚くのが、透析にかかる医療費。
1人あたり年間500万〜700万円。健康保険が破綻する大きな要因になります。
それが、健康保険、特定疾病療養制度、自立支援医療、福祉医療などで患者さんの負担は0です。
(近年はさすがにまずいという自治体もでていて1回1000円程度払ってもらう自治体も出てきている・・・と当時聞いたことがありますが、ほとんどが完全無料。)
透析が始まると、「日常生活に支障をともなう障害」となり「腎臓機能の障害者」とみとめられるので、医療費は透析以外でも無料となります。風邪をひいても、白内障手術も、腰痛も。
自己管理ができない生活習慣から透析になる人も多いので、生活保護の人もたくさんいまして、白内障の手術や整体などかなり手厚く充実された生活を送れています。
「医療費がかかるからと、病院には極力行かないように我慢している老夫婦。」
「介護保険だって自己負担があるからと、なんとか頑張って身内で介護している家族。」
「働きたいのに正社員で雇ってもらえず、天涯孤独で、なんとなかパート収入だけで生活している病気の独身年配女性」の存在が本当に気の毒です。
人工透析になったらもらえるお金
年齢にかかわらず、発症時に年金を払っていれば、障害年金を月に数万〜十数万程度もらえます。
これで働く気がなくなる人もたくさんいます。
さらに、個人で医療保険をかけている方は、手術代が保険からも支払われます。シャント(静脈を動脈をつなげることで太くして太い針に耐えるようにします。)の手術の度に、本人に負担はありませんが手術費用が保険から数万もらえます。ある患者さんは「手術は嫌だけれど、お小遣いが入るわー」と話します。
ただ、常に不安でいることとしては「障害者」だし、それ相応の保護をされてもいいと考えつく患者さんがいても不思議ではないのかもしれません。
人工透析患者の実際
「透析」は知らない人にはピンとこないと思いますが、人生が変わってしまうかなり辛いものです。私も「透析」を知ってから血液検査「クレアチニンの値」に敏感になりました。
人工透析の精神的負担はかなり重い
週に3回の長時間の拘束はすごく気が重いもの。現代の医療では死ぬ日までずっと透析をする必要がありますので、終わりがない辛さです。
さらに毎回すごく太い針を刺されます。大人の男性も泣く人がいるくらいの太さです。話を聞く中でこれが一番辛いと言っている人もいます。
透析の血流が当日の体にあっていないと血圧が低下して意識障害を起こす恐れもあります。透析中にベッドの上で急変してそのまま亡くなるケースも少なくありません。突然パーテーションで仕切られ亡くなってしまうことは結構あります。
大多数の人が生活のルーティンにして何事もなく通院しているようにみえますが、老若男女、「死」を意識している方が多いのが実情です。
人工透析になることを拒む人もいる
糖尿病Ⅰ型、Ⅱ型とありますが、どちらにしても腎機能が徐々に弱っていくのですぐに「透析」とはなりません。いずれは「透析」という展望のもと治療がすすみます。
先ほども書いたように「人工透析」は人生を変えてしまう辛い治療ですので、導入になってもきちんと来ない人もいます。中には自殺行為を貫く人もいますが、大体は苦しくなって(溺死の苦しみだそうです)やっぱりやって下さい!となるようです。冒頭の40代女性のニュースも直前に「やっぱり治療をします」と撤回されたことはここにつながるように思います。でも苦しくなった時点でかなり毒素が体に溜まっていますので正直手遅れとなってしまいます。
もちろん医療従事者は透析に来ないことを厳しく注意したり、慰めながらなんとか通院してもらう努力をします。※個人的にはどうして無理にでも来てもらうようにするのかと疑問ではありました。
認知症の透析患者が増え続けている疑問
ご本人は認知症でも家族が治療を望めば透析が始まります。正直医師の提案を断るという選択肢は広まっていませんので、当たり前のように家族は導入を受け入れます。
でも、認知症の人にとって自分の病理と透析のことを理解できないことが多いので、どうして太い針をさされないといけないのか、ベッドに縛り付けて4時間も寝ていないといけないのか、と叫んだり、暴れたりします。針を抜いてしまうので、手を縛られているのはよくあります。鎮静剤を打ってなんとかかんとか透析をする実情もあります。
糖尿病には2種類ある!Ⅰ型とⅡ型の患者さんの違いとは
「透析」患者さんを一括りにしていますが、糖尿病Ⅰ型とⅡ型で根本的な原因が違います。先天性の糖尿病Ⅰ型の方は、生活習慣で発症した糖尿病Ⅱ型の人と一緒にされるのを嫌がります。
確かにⅠ型の患者さんはおとなしい方が多いのですが、Ⅱ型の患者さんはわがままで自己中心的な方が多いですね。Ⅱ型の方は、自己管理ができていない方、低収入の方も多いです。
これからの人工透析に何が必要なのか。
人工透析にまつわるニュースから学べることを考えてみました。
導入時における詳しい説明に心の変化について加えた意思確認をする
どのような経過をたどるか、精神的にどのような変化があるのか、どんな苦しみが待っているのかを包み隠さず詳しく話し合う必要があります。家族にも同様に話す必要があります。その上で本人の意向を優先させて決定する。ニュースであった直前に意思確認が覆ってしまって、医療側の責任になるなんて、説明の甘さがあったと思います。
人工透析は治療なのか、延命なのかの共通認識
治療なのか延命なのかで言ったら「延命」です。一度低下した腎機能は不可逆性であり、透析をしても改善することがありませんので。あくまでも「延命治療」だということを考えていく必要があります。
最先端の医療へ
透析にかわる治療法が早く開発されることを望むばかりです。針については少しでも痛みを軽減できるような(?)改善がされつつありますが、根本的に腎機能が改善するような治療ができたらいいですよね。糖尿病の初期のうちに治るようなものがでると国の医療費もかなり楽になります。
人工腎臓が移植できるようになると良いですよね。
まとめ
知らない人は知らなくてよい「人工透析」の世界。
でも、国の医療費がかなり使われていることは税金をおさめるものとしては知識として知っておいてもよいかと思います。そして透析患者は増え続けています。
何十本もの血液の管がワンフロアにごっそり並んでいるのをみると失神しそうになります。